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奈良博手帖

当館研究員が日々の研究や活動についてさまざまな視点でご紹介します。
※読売新聞奈良版に連載している「奈良博手帖」を読売新聞社の諒解のもとに転載しております。
研究員の肩書きは執筆時となります。

2023.04.19 (Wed)

精緻な金工 ファン必見 「名だたる仏舎利 一堂に」

名だたる仏舎利の数々を一堂に公開する。そう聞いて色めき立つのは、よほどの仏教美術ファン、またはお坊さんをはじめ信仰心の篤(あつ)い方々に違いない。22日~6月4日に開催する名品展「珠玉の仏教美術」では奈良博の所蔵品やお預かり品から仏舎利信仰の流れを示しつつ、精緻(せいち)な工芸技術を駆使した舎利荘厳の代表作を紹介する。仏舎利ファン(?)ならば必見の展示と言えるだろう。

2023.03.22 (Wed)

仏像の魅力 翻訳で学ぶ 「展示品の特色 多言語で紹介」

奈良国立博物館のなら仏像館では常時100件近くの仏像が展示されている。飛鳥時代から鎌倉時代までの仏像を中心に、中国や朝鮮半島のものも含まれる。それらを多言語で紹介するのが我々翻訳者の仕事であるが、恥ずかしながら私は、この仕事に携わるまで仏像に関する知識が浅かった。

2023.03.15 (Wed)

疫病防除の儀礼 国越え 「神祀り」奈良期に盛行

去る2月、韓国・中国・日本の3か国の古代史研究者がオンラインで集まる東アジア古代史研究会に参加させていただいた。最後に話題となったのは、どうして奈良時代に疫神防除のための神祀(まつ)りが盛行したかであった。境界領域の神であった気多・気比神、鹿嶋神、八幡神は、平安末期になると、奈良・東大寺(戒壇院・勧進所)に奉られたが、これは現在も継承され、修二会(しゅにえ)の声明で勧請(かんじょう)が行われている。

2023.03.08 (Wed)

修理技術者 奈良で誕生「岡倉、新納の理念伝える」

多くの方は文化財修理の本場は京都や東京とお考えなのではないでしょうか?事実、その二つの地域は昔から多くの職人が文化財修理を行ってきましたし、現在も幅広い分野で多くの修理技術者が活躍しています。また、修理を支える材料や道具の製作者の多くも活躍しています。しかし、日本の修理技術者の歴史は京都でも東京でもなく、奈良から始まっているのです。

2023.02.15 (Wed)

文化財修理を支える 古糊の仕込み

雪もちらつく大寒(だいかん)の1月21日、文化財の修理工房である坂田墨珠堂(大津市)の「寒(かん)糊炊(のりた)き」に参加させていただいた。1年に1度、大寒の時期に各工房で仕込みの行われる古糊(ふるのり)は、書画を掛軸や巻子(かんす)に仕立てる際に伝統的に用いられてきた特別な接着剤である。

2023.02.01 (Wed)

制作地 文様から推察 正倉院宝物「紫檀木画箱」

今から約1300年前、天平勝宝4年(752年)4月9日に東大寺大仏開眼会が営まれた。正倉院には、そこで使用された品々や献納された品々が多数伝わっている。華やかな宝物を間近にすると、奈良時代の仏教法会がどのようなものだったのか、その場を見てみたくなる。