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奈良博手帖

当館研究員が日々の研究や活動についてさまざまな視点でご紹介します。
※読売新聞奈良版に連載している「奈良博手帖」を読売新聞社の諒解のもとに転載しております。
研究員の肩書きは執筆時となります。

2024.03.19 (Tue)

処置待つ 被災文化財 「レスキュー 厳しい未来」

来月11日で東日本大震災から13年が経ちます。一昨年の11月には津波で壊滅的な被害のあった陸前高田市立博物館(岩手県)も10メートル嵩上げした場所で活動を再開しました。元旦に起きた能登半島地震をはじめ、この13年の間に国内では大地震や大水害などがいくつもあり、東日本大震災はここ奈良でも人々の間では遠い存在になってしまったように感じます。

2024.02.21 (Wed)

「形の妙」最大の魅力 作品解説 学芸員の「思い」も

博物館の学芸員の仕事に、展示品のみどころを解説する、というものがある。講堂での講演会、展示室でのギャラリートークなど、解説の場にはいくつかのパターンがある。なかでも多いのが、展覧会カタログなどに作品解説の文章を書くことだ。当館の場合、1件の作品につき600字前後の分量で書くきまりがある。この限られた字数の中で、必要な情報をまとめるのは、案外難しい。「その作品は何か、どんな形をしているか、どうやって作られているか・・・」など、要領よく文章にする必要がある。単に短くまとめるには、専門用語を使うのが便利だが、内容がわかりにくくなるため、極力なじみのある言葉を使う。

2024.01.24 (Wed)

原本 息づかい感じる 米国に保管 フェノロサの資料

コロナ禍を経た昨年2月、アメリカ東海岸へ久しぶりに調査に赴いた。目的地はハーバード大ホートン・ライブラリーである。アメリカ最古の歴史を誇るこの大学には調査研究活動を支える73館もの図書館があり、ホートン・ライブラリーは稀(き)覯(こう)書や手稿などの特別コレクションを保管している。調査を希望したのはそこに蔵されるアーネスト・フェノロサ資料で、なかでも奈良・京都の社寺を調査した際のノートや、文部省や岡倉天心らとの間で交わされた文書・書簡類だ。

2023.12.27 (Wed)

祭礼の空間出現に高揚 1年に数日開かれる場所

奈良の町には、1年のうちわずか数日だけ開かれる特別な場所がある。12月の春日若宮おん祭にあわせて開かれる、奈良市餅飯殿町の大宿所(おおしゅくしょ)、春日大社参道沿いの御旅所(おたびしょ)。普段生活している町に何百年と続く祭礼の空間が出現すると、年の瀬で浮き足立った心も相まって、不思議と高揚した気分になる。新興住宅地で育った私には、日常生活の空間と歴史ある信仰の空間が入り混じる町の様子は新鮮で、とても魅力的だった。

2023.12.13 (Wed)

郵送希望 途切れて不安 発行から31年の広報誌

当館では『奈良国立博物館だより』という広報誌を3か月に1度発行している。1992年4月に第1号が発行されてから31年。来年1月号が128号となる。当初モノクロのB5版だったがA4一部カラーとなり、2017年1月、100号記念のささやかなモデルチェンジによりフルカラーとなった。内容は展覧会やイベントの紹介、展示品一覧が主であることは当初から現在まで変わらないが、読みものも増えた。

2023.11.22 (Wed)

西安の地で縁結ぶ 空海の偉大さ 再認識

先日、中国陝西省の西安市を訪れた。弘法大師空海の生誕1250年を記念し、来年春に当館で開催する特別展「空海 KŪ KAI―密教のルーツとマンダラ世界」の準備のためだ。西安市は古都長安を前身とする巨大都市で、唐の時代に空海が渡った地である。