2024.02.21 (水)

「形の妙」最大の魅力 作品解説 学芸員の「思い」も

 

 博物館の学芸員の仕事に、展示品のみどころを解説する、というものがある。講堂での講演会、展示室でのギャラリートークなど、解説の場にはいくつかのパターンがある。なかでも多いのが、展覧会カタログなどに作品解説の文章を書くことだ。

 

 当館の場合、1件の作品につき600字前後の分量で書くきまりがある。この限られた字数の中で、必要な情報をまとめるのは、案外難しい。「その作品は何か、どんな形をしているか、どうやって作られているか・・・」など、要領よく文章にする必要がある。単に短くまとめるには、専門用語を使うのが便利だが、内容がわかりにくくなるため、極力なじみのある言葉を使う。

 

 私は、博物館で「工芸品」の分野を担当している。この分野の作品は、や箱など、立体物が多い。3次元の物の形をどう言葉で表現するかが、まず苦心するところだ。また、物の形をそのまま記述するだけでは、味気ない解説になってしまう。その作品のどこが素晴らしいのか、学芸員の「思い」を盛り込むのも大事だと思う。

 

 写真は、当館所蔵の「さんしょ」という作品だ。両端が三つまたになった形が特徴的だが、他の三鈷杵にはない、この作品ならではの魅力をどう表現すればよいか。例えば、三つ叉になった部分の外への張り出しが、実に優美なカーブを描いていること。一方、中央の半球形の飾りの突出が強く、めりはりが効いていること。この相反する表現が、一つの三鈷杵にバランス良く同居しているところに、一級の技とセンスが感じられる。「形の妙」がこの作品の最大の魅力であることを、私なら伝えたい。

 

(奈良国立博物館工芸考古室主任研究員 三本周作)

 

奈良国立博物館が所蔵する平安時代の「金銅三鈷杵」(服部和彦氏寄贈)

 

  

[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2024年2月14日掲載]

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