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奈良博手帖

当館研究員が日々の研究や活動についてさまざまな視点でご紹介します。
※読売新聞奈良版に連載している「奈良博手帖」を読売新聞社の諒解のもとに転載しております。
研究員の肩書きは執筆時となります。

2024.01.24 (Wed)

原本 息づかい感じる 米国に保管 フェノロサの資料

コロナ禍を経た昨年2月、アメリカ東海岸へ久しぶりに調査に赴いた。目的地はハーバード大ホートン・ライブラリーである。アメリカ最古の歴史を誇るこの大学には調査研究活動を支える73館もの図書館があり、ホートン・ライブラリーは稀(き)覯(こう)書や手稿などの特別コレクションを保管している。調査を希望したのはそこに蔵されるアーネスト・フェノロサ資料で、なかでも奈良・京都の社寺を調査した際のノートや、文部省や岡倉天心らとの間で交わされた文書・書簡類だ。

2023.12.27 (Wed)

祭礼の空間出現に高揚 1年に数日開かれる場所

奈良の町には、1年のうちわずか数日だけ開かれる特別な場所がある。12月の春日若宮おん祭にあわせて開かれる、奈良市餅飯殿町の大宿所(おおしゅくしょ)、春日大社参道沿いの御旅所(おたびしょ)。普段生活している町に何百年と続く祭礼の空間が出現すると、年の瀬で浮き足立った心も相まって、不思議と高揚した気分になる。新興住宅地で育った私には、日常生活の空間と歴史ある信仰の空間が入り混じる町の様子は新鮮で、とても魅力的だった。

2023.12.13 (Wed)

郵送希望 途切れて不安 発行から31年の広報誌

当館では『奈良国立博物館だより』という広報誌を3か月に1度発行している。1992年4月に第1号が発行されてから31年。来年1月号が128号となる。当初モノクロのB5版だったがA4一部カラーとなり、2017年1月、100号記念のささやかなモデルチェンジによりフルカラーとなった。内容は展覧会やイベントの紹介、展示品一覧が主であることは当初から現在まで変わらないが、読みものも増えた。

2023.11.22 (Wed)

西安の地で縁結ぶ 空海の偉大さ 再認識

先日、中国陝西省の西安市を訪れた。弘法大師空海の生誕1250年を記念し、来年春に当館で開催する特別展「空海 KŪ KAI―密教のルーツとマンダラ世界」の準備のためだ。西安市は古都長安を前身とする巨大都市で、唐の時代に空海が渡った地である。

2023.10.25 (Wed)

「春日移し」南山城各地に 密接な交流紹介 初の試み

今夏に当館で開催した特別展「聖地南山―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝」は、京都府最南部に位置する南山城地域の仏教文化を、隣接する奈良との密接な交流に視点を据えながら紹介する初めての試みとなった。京都府木津川市在住の南山城住民である私は、その縁もあって、企画が立ち上がった当初から本展覧会に深く関わることになった。

2023.10.04 (Wed)

再び結ばれた縁 南山城 魅力を発信

今月3日、奈良国立博物館の特別展「聖地 南山城―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝―」が閉幕した。京都府の最南部、奈良市に隣接する南山城地域に花開いた仏教文化を紹介したこの企画は、当館の夏期特別展としては大健闘の6万人近いご来館があり、南山城の魅力を多くの皆様に体感していただくことができた。