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奈良博手帖

当館研究員が日々の研究や活動についてさまざまな視点でご紹介します。
※読売新聞奈良版に連載している「奈良博手帖」を読売新聞社の諒解のもとに転載しております。
研究員の肩書きは執筆時となります。

2023.05.31 (Wed)

8枚分析 金の濃度高く「日本で最初に作られた金貨」

皆さんは、日本で最初に作られた金貨をご存じですか?その金貨の名は「開基(かいき)勝寳(しょうほう)」と言い、「続日本(しょくにほん)紀(ぎ)」に記載された内容から、天平宝字4年(760年)に銀銭の大平(たいへい)元寳(げんぽう)、銅銭の萬年(まんねん)通寳(つうほう)とともに鋳造されたことが知られています。円形方孔で、銭銘は吉備真備(きびのまきび)の筆とされており、銅銭10を銀銭1に、銀銭10を金銭1に当てました。

2023.05.03 (Wed)

仏教美術に親しみを 「体験学習スペース新設」

奈良国立博物館は、仏教美術を主に展示している博物館です。けれど、「仏教美術」と聞くと、何だか難しそう……とイメージされがちです。子どもから大人まで、より幅広い層に仏教美術に親しんでほしい、そのために仏教美術について体験的に楽しく学習できるような環境を提供しよう、と少しずつ準備を進めてきました。

2023.04.19 (Wed)

精緻な金工 ファン必見 「名だたる仏舎利 一堂に」

名だたる仏舎利の数々を一堂に公開する。そう聞いて色めき立つのは、よほどの仏教美術ファン、またはお坊さんをはじめ信仰心の篤(あつ)い方々に違いない。22日~6月4日に開催する名品展「珠玉の仏教美術」では奈良博の所蔵品やお預かり品から仏舎利信仰の流れを示しつつ、精緻(せいち)な工芸技術を駆使した舎利荘厳の代表作を紹介する。仏舎利ファン(?)ならば必見の展示と言えるだろう。

2023.03.22 (Wed)

仏像の魅力 翻訳で学ぶ 「展示品の特色 多言語で紹介」

奈良国立博物館のなら仏像館では常時100件近くの仏像が展示されている。飛鳥時代から鎌倉時代までの仏像を中心に、中国や朝鮮半島のものも含まれる。それらを多言語で紹介するのが我々翻訳者の仕事であるが、恥ずかしながら私は、この仕事に携わるまで仏像に関する知識が浅かった。

2023.03.15 (Wed)

疫病防除の儀礼 国越え 「神祀り」奈良期に盛行

去る2月、韓国・中国・日本の3か国の古代史研究者がオンラインで集まる東アジア古代史研究会に参加させていただいた。最後に話題となったのは、どうして奈良時代に疫神防除のための神祀(まつ)りが盛行したかであった。境界領域の神であった気多・気比神、鹿嶋神、八幡神は、平安末期になると、奈良・東大寺(戒壇院・勧進所)に奉られたが、これは現在も継承され、修二会(しゅにえ)の声明で勧請(かんじょう)が行われている。

2023.03.08 (Wed)

修理技術者 奈良で誕生「岡倉、新納の理念伝える」

多くの方は文化財修理の本場は京都や東京とお考えなのではないでしょうか?事実、その二つの地域は昔から多くの職人が文化財修理を行ってきましたし、現在も幅広い分野で多くの修理技術者が活躍しています。また、修理を支える材料や道具の製作者の多くも活躍しています。しかし、日本の修理技術者の歴史は京都でも東京でもなく、奈良から始まっているのです。