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奈良博手帖

当館研究員が日々の研究や活動についてさまざまな視点でご紹介します。
※読売新聞奈良版に連載している「奈良博手帖」を読売新聞社の諒解のもとに転載しております。
研究員の肩書きは執筆時となります。

2023.12.13 (Wed)

郵送希望 途切れて不安 発行から31年の広報誌

当館では『奈良国立博物館だより』という広報誌を3か月に1度発行している。1992年4月に第1号が発行されてから31年。来年1月号が128号となる。当初モノクロのB5版だったがA4一部カラーとなり、2017年1月、100号記念のささやかなモデルチェンジによりフルカラーとなった。内容は展覧会やイベントの紹介、展示品一覧が主であることは当初から現在まで変わらないが、読みものも増えた。

2023.11.22 (Wed)

西安の地で縁結ぶ 空海の偉大さ 再認識

先日、中国陝西省の西安市を訪れた。弘法大師空海の生誕1250年を記念し、来年春に当館で開催する特別展「空海 KŪ KAI―密教のルーツとマンダラ世界」の準備のためだ。西安市は古都長安を前身とする巨大都市で、唐の時代に空海が渡った地である。

2023.10.25 (Wed)

「春日移し」南山城各地に 密接な交流紹介 初の試み

今夏に当館で開催した特別展「聖地南山―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝」は、京都府最南部に位置する南山城地域の仏教文化を、隣接する奈良との密接な交流に視点を据えながら紹介する初めての試みとなった。京都府木津川市在住の南山城住民である私は、その縁もあって、企画が立ち上がった当初から本展覧会に深く関わることになった。

2023.10.04 (Wed)

再び結ばれた縁 南山城 魅力を発信

今月3日、奈良国立博物館の特別展「聖地 南山城―奈良と京都を結ぶ祈りの至宝―」が閉幕した。京都府の最南部、奈良市に隣接する南山城地域に花開いた仏教文化を紹介したこの企画は、当館の夏期特別展としては大健闘の6万人近いご来館があり、南山城の魅力を多くの皆様に体感していただくことができた。

2023.09.20 (Wed)

仏像の歴史 明らかに CT調査 過去の修理探る

文化財調査の手法の一つにX線CT調査があります。CTは非破壊で内部の様子を知ることが可能で、奈良博の仏像調査でも構造の解明や納入品の発見など多くの成果を挙げています。さらに、虫食いの度合いや修理履歴など保存状態の把握や、解体修理前に立体的な知見が得られることから、修理を行ううえでの一つの足掛かりにもなっています。

2023.09.06 (Wed)

平安貴族の信仰伝える 「経塚」手厚く埋納

京都府南東部に位置する笠置山。その頂上には、巨大な弥勒(みろく)摩崖仏をご本尊とする笠置寺があります。奈良の人にとっては、弥勒の住む天界へつながる龍穴があるという、東大寺・お水取りの始まりの地としても知られているでしょう。今春、展覧会の事前調査のために、笠置寺に伺(うかが)いました。拝見したのは境内で出土した、お経を納める金属の筒や陶器の壺(つぼ)。平安時代の後半に盛んに築かれた「経塚」に埋納されていたものです。