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奈良博手帖

当館研究員が日々の研究や活動についてさまざまな視点でご紹介します。
※読売新聞奈良版に連載している「奈良博手帖」を読売新聞社の諒解のもとに転載しております。
研究員の肩書きは執筆時となります。

2025.03.27 (Thu)

新鮮な視点 作品に輝き 海外交流展の意義

 奈良国立博物館に勤務してもうすぐ7年。その間、さまざまな業務に携わることができたが、なかでも濃密な経験になったのが、展覧会を通じた海外との交流だ。私にとっての最初の海外出張は2019年、アメリカのクリーブランド美術館で「神道」をテーマにした展覧会が開催されたときのこと。同展にはアメリカに所在するものはもちろん、日本からも関連の文化財が多数出品された。

2025.03.26 (Wed)

二月堂焼経 流出原因は 文化財 守り伝える難しさ

 毎年修二会しゅにえ(お水取り)が行われる東大寺の二月堂には、かつて奈良時代の写経が安置されていた。深い紺色の紙に銀泥ぎんでいで書写された、60巻の「華厳経」だ。寛文7年(1667年)に二月堂を全焼させた火災により、経巻の上下端が焼け焦げており、「二月堂焼経やけぎょう」という通称で古美術愛好家の間で知られている。

2025.03.05 (Wed)

修理や所有者 歩み語る 絵画の裏面や付属品

博物館にある絵画というと、展示室のガラスケースの中に掛けられた姿がまず想像されるでしょう。しかし、博物館の絵画のほとんどは収蔵庫の中にあります。博物館の所蔵品や、寺院・神社などからお預かりした寄託品が、それぞれに設(しつら)えられた木箱におさめられて棚に並んでいます。

2025.02.12 (Wed)

千年越え日中結ぶ縁 仲麻呂の功績 西安の碑に

 昨年の夏、私は故郷である西安を訪れ、唐代の日本人留学生・阿倍仲麻呂の記念碑を訪ねた。仲麻呂は奈良時代に遣唐使として唐に渡り、中国では「朝衡(ちょうこう)」と名乗り、優れた学識と誠実な人柄で唐の朝廷から厚く信頼された人物だ。彼は帰国せず、「唐の風を慕う」として長安(現在の西安)で生涯を終えた。その生き様は、今も多くの人々の心を動かしている。

2025.02.04 (Tue)

写真洗浄で被災地支援 復興に欠かせない文化財

2025年1月17日で阪神淡路大震災から30年経ちました。昨年元旦に起きた能登半島地震も多くの人命と共に多くの文化財を消失し、秋には大雨災害もあったため能登の復興は道半ばです。多くの方が物資や義援金で復興に寄与されましたが、「お金や物以外で何か支援をしたい」とお考えではないでしょうか? 阪神淡路大震災は“ボランティア元年”とも言われていますが、“被災地ボランティア”と聞いて多くの方々は、「活動にはお金も時間も体力がかかる」「私には特筆できる専門的な技術もない」と想像されるかもしれません。

2024.12.25 (Wed)

科学調査 修理サポート 「現状維持」後世に伝える

現在、奈良国立博物館では昨年度までに修理された当館の収蔵品を公開する特集展示「新たに修理された文化財」が開催されています。本展覧会に出陳される作品をはじめ、収蔵品の大半は当館敷地内にある文化財保存修理所で修理が行われます。修理所内には仏像を中心とした彫刻作品、絵画・書跡、漆工芸品を扱う三つの工房が入っており、伝統的な材料・技法に加えて、科学調査を活用した修理が行われています。