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奈良博手帖

当館研究員が日々の研究や活動についてさまざまな視点でご紹介します。
※読売新聞奈良版に連載している「奈良博手帖」を読売新聞社の諒解のもとに転載しております。
研究員の肩書きは執筆時となります。

2024.12.11 (Wed)

過去40年の解説一堂に 正倉院展用語解説 サイト開設

学生時代、演習で「The Worlds of Reference」という洋書が課題になった。古今のレファレンスブック、すなわち辞書や事典、索引などの歴史をひもといた一冊で、私たちは輪番で各章を翻訳し、文中に登場する様々な辞書類を調べてレジュメを作成した。この授業で学術の基礎が「言葉」にあることを認識すると同時に、言葉にまつわる深淵(しんえん)な世界と気の遠くなるような編さん事業に畏敬の念を抱いたものだった。

2024.11.27 (Wed)

音声ガイド 制作に力 鑑賞の相棒 たまにはいかが

展覧会で用意される音声ガイド。奈良国立博物館では、その制作を筆者が所属する教育室という部署が担当している。音声ガイドには専門の業者があり、博物館がタッグを組んで音声ガイドを作り上げる。まずは音声ガイドで紹介する作品(特別展だと20件前後)と、その展覧会にフィットするナレーターを選ぶ。読み上げる原稿は業者が草案を作成し、博物館側はその内容をチェックする。各作品の図録原稿を書いた研究員一人ひとりに原稿を見てもらうが、耳で聴いてわかりやすい言葉遣いになっているか、自然な話の流れか、といった調整は教育室が担う。

2024.10.16 (Wed)

「鹿だまり」減り水浴びに 集団行動 環境で変化?

10月1日のことである。大量の鹿が、奈良国立博物館のなら仏像館入口前の池につかっている、と聞いて見に行ってみた。夏に池に入る鹿は珍しくなかったが、この時期にこんなにたくさんの鹿が池に入っているのを見たのは初めてだと思う。鹿たちはすっかり明るい色の夏毛から、暗い色の冬毛に生え替わっている。いくら朝夕涼しくなってきたとは言え、日中は30度近くになる。冬物に衣替えした鹿たちは、本当に暑くて水に浸かっているのだろう。

2024.10.09 (Wed)

伎楽復元へ 日韓を比較「楽舞ルーツ 最古の渡来芸」

日本の伝統演劇史を調べると、最古の渡来芸であり、日本の芸能に大きな影響を与えたとされる伎(ぎ)楽(がく)に関する諸情報を得ることができる。「日本書紀」によれば、612年、百済人の味摩之(みまし)が日本列島に渡ってきて、「呉(くれ)」(中国の江南地方)で学び伎楽舞を習得した」と言ったという。そこで朝廷は、味摩之を現在の奈良県の桜井に住まわせて、少年たちを集め、その舞を習わせた。

2024.10.03 (Thu)

仏像の個性 見つめて「会えるシート わくわく鑑賞」

奈良国立博物館のなら仏像館には、常時約100体の仏像が展示されている。ずらりと展示された仏像に感動する来館者がいる一方で、「仏像の違いがよくわからない……」と話しながら、足早に展示室内を1周して、すぐに出ていってしまう来館者も少なからずいる。そうした課題を受け、最近新たに制作したのが、「今日会える仏像」シートだ。

2024.09.12 (Thu)

雲版 時報の音響かせ 琉球王国時代の現存唯一

奈良国立博物館には、1458年に製作された琉球国大里城(おおざとぐすく)の雲版が寄託されています。雲版とは、禅宗寺院で時報などを知らせるために打ち鳴らす、青銅または鉄で作った雲形の板のことです。本品の寸法は幅46.6cm、高さ49.6cm、厚さ2.0cm、撞座(つきざ)は損傷していますが重さは約10kgあります。