2026.01.28 (水)
題箋 見どころ明快に 幅広い層へ向け尽力
博物館にとって、作品の展示意図を示すことは使命の一つである。奈良博では近年、幅広い層へ向けた教育普及活動のほか、外国人観覧客のための題箋(キャプション)の多言語化にも力を入れ、拡充を図っているところだ。今回は会場に掲示する展示企画の概要やトピックを伝えるパネル、作品のそばに添える題箋を作る現場から話をしたい。
当館の題箋は、作品の名称、制作年代、作者、材質技法を基礎情報として示し、解説には「いつ誰が何のために作り、何がわかり大事なのか」、時に背景にある逸話を交え、見どころを伝えるべく作成している。書くのは、絵画、書跡、彫刻、工芸、考古分野の各研究員である。キモは、難解な専門用語を避け、必要な情報をわかりやすく明快に盛り込むことだ。それゆえ、わずか90字の中に、研究員が注目するポイントが書かれていると、編集側としては、とても嬉しい。
パネルには、理解が難しい絵画や書跡作品の補足情報、特筆すべき材質技法を用いた彫刻や工芸作品の紹介、考古資料の最新の科学分析成果などを示すことが多い。展示の意図を印象づけられるよう、内容や表現の仕方には特に力を入れ、何度も練り直しを行っている。
現在、当館は4月開幕の特別展「神仏の山 吉野・大峯―蔵王権現に捧げた祈りと美―」に向けた準備の真っ最中である。以前に観た作品でも、切り口の異なる展示意図から、それらを育んだ過去の人々の考え方や工芸技術の精華に触れると面白く、一層気合いが入る。この春は、当館の展示作品との出会いを携えて吉野・大峯の地を訪れ、全身で感応するのはいかがだろうか。
( 奈良国立博物館芸部企画室アソシエイトフェロー 松本和蘭子)
[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2026年1月21日掲載]

