2025.11.26 (水)
興福寺伝来 四天王像2体 面目一新 来月そろって公開
今年の正倉院展も大盛況のうちに幕を閉じた。その余韻に浸る間もなく、現在当館では12月23日に開幕する修理完成記念特別公開「興福寺伝来の四天王像」(令和8年3月15日(日)まで)の準備が進んでいる。
この四天王像は明治39年(1906年)まで興福寺に一具で伝来した作品で、広目天が今も興福寺に残る(当館に寄託)ほかは、持国天が滋賀県のMIHO MUSEUM、増長天と多聞天が当館の所蔵となっている。
4体の威厳に満ちた表情は強い印象を与え、劇的な身ぶりや重厚で引き締まった体軀にみなぎる充実感は圧巻であり、増長天・多聞天はともに仏像館の展示の顔として長らく観覧者を魅了してきた。
明治時代の修理から百年あまりが経過し、表面彩色の浮き上がりや過去の修理箇所の変色が目立つ状態にあったため、昨年度バンク・オブ・アメリカの助成を受けて剝落止めや古色修整を主とする保存修理を実施した。
修理に先立ち行ったX線CTスキャン調査により、構造や保存状態の詳細が明らかとなり、そうした知見を踏まえることでより精度の高い修理をすることができた。最新の成果は展示会場で紹介する予定だ。
4体そろって公開は、平成9年(1997年)に当館で開催した特別展「奈良国立博物館の名宝―1世紀の軌跡―」以来、じつに28年ぶりのことである。増長天と多聞天の面目を一新した姿をお披露目するとともに、個性豊かな4体の共演にもご注目いただきたい。
( 奈良国立博物館美術工芸室長 山口隆介 )
[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2025年11月19日掲載]
