2025.09.03 (水)

特別展と万博 両面から体験 世界の看板 過去と未来

 今年4月から大阪・関西万博が開催されている。私は開幕直後に夢洲を訪ね、さまざまな国のパビリオンを見て回った。会場内のフードコートでは、多様なグルメの店が出店しており、タコ焼きや串カツなどの大阪名物の看板は、青森県の「ねぶた」の技法で制作され、立体的に表現されていた。

 

 こうした文字ではなく販売品そのものを表した看板は、現在のみならず20世紀の中国でも広く使われていた。例えば、帽子屋であれば帽子、靴屋であれば靴の模型を表現し、文字を読めない人でも販売するモノを宣伝できる工夫が込められていた。これを「幌子(ホァンツ)」と呼び、20世紀前半まで北京の街角で普通に見かけられた。現在ではほとんど残っていないが、日本では天理大学附属天理参考館が約130点にのぼる中国看板資料を所蔵している。

 

 奈良国立博物館では、7月末から特別展「世界探検の旅―美と驚異の遺産―」を開催しており、東洋から西洋まで、また古代から近代までの世界各地の民族資料を一堂で観覧できる。展示の後半には、実物看板、模型看板、包装看板、効果看板、象徴看板、描写看板など六つの区分に分けた北京の幌子が陳列され、過去の宣伝方法を現在の我々が目にすることができる

 

 この夏、大阪・関西万博では世界中の最先端技術を体験し、奈良博では世界各地の文化や風俗に触れていただくことで、過去と未来の両面から世界を経験してほしい。大阪・関西万博は10月13日に、奈良博「世界探検の旅」展は9月23日に閉幕となる。

( 奈良国立博物館交流推進室 アソシエイトフェロー チュイ・ビアンカ)

特別展「世界探検の旅」で展示されている北京の看板

[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2025年8月29日掲載]

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