2025.07.23 (水)
仏像の質感 模像で学ぶ 薬師如来 願い込めて触れて
奈良国立博物館では、第2・4日曜をのぞく開館日毎日、地下回廊の体験スペース「ちえひろば」で、まいにちワークショップを開催している。その体験メニューの一つである「ほとけさまにふれよう!」は、当館所蔵で平安時代(9世紀)に作られた国宝「薬師如来坐像」を忠実に再現した像、すなわち模像を活用したワークショップだ。
この模像を奈良博では「令和の薬師如来坐像」と呼んでいる。実際に触れてみることで、仏像のグループの一つである「如来」の体の特徴のほか、仏像の素材となる木材の質感や香りを体感的に学ぶことができる。子どもから大人の方まで幅広い層に仏像に気軽に親しんでほしいという思いから、このワークショップを企画した。
このワークショップは今年の2月から開始し、既に7500人以上もの方々にご参加いただいている。特別展「超 国宝」の会期中は参加者がとりわけ多く、1日あたりの参加者数が200人を超える日もあった。令和の薬師如来坐像の経過観察をしていると、特に頭や膝の部分が少しずつ黒くなってきている。頭には「賢くなるように」、膝には「膝の調子が良くなるように」という願いを込めて触れる方が多いのかなと、参加者の気持ちを想像している。
令和の薬師如来坐像は、これからも大勢の方々に触れていただきながら、徐々に古びた色になり、オリジナルの像の色へと近づいていくのだろう。どんな願いが託されながら、色が変わっていくのだろうか。これからの様子を見守るのがとても楽しみだ。
( 奈良国立博物館教育室研究員 翁 みほり)

[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2025年7月16日掲載]