2025.07.11 (金)

唐招提寺の蓮 展示 ほとけさまのお花 ご覧に

 ほとけさまのお花である「はす」が、そろそろ見頃を迎える。蓮の季節は一般に6月末から8月にかけて、夏のまだ日差しが強くならない早朝に、大輪の美しい花を咲かせる。涼しい風が感じられる早朝にりんとした姿で花ひらく蓮を観賞すると、背筋が伸び、気持ちがよい。

 

 奈良国立博物館では毎年この夏の時期に、多数の蓮を育てている唐招提寺から蓮の株をお借りし、来館者の皆さまにご覧いただいている。近年は、この蓮を鹿が食べてしまう事態が発生するようになり頭を悩ませているものの、今年もすでに蓮を借り受けて、水路に設置した。

 

 唐招提寺では約60種類の蓮を育てているが、奈良博ではこのうち、鑑真和上ゆかりの蓮として、唐招提寺に古くから伝わる「唐招提寺蓮」をはじめとした12種類の蓮を観賞することができる。

 

 この取り組みの歴史はすでに20年を超えており、その発端は2000年代初頭に行われた唐招提寺と鑑真和上をテーマにした展覧会に、奈良博が携わった機会であった。この20年の間には、例年の蓮の設置から発展し、蓮を用いたイベント開催もあった。2022年夏、「中将姫と當麻たいま曼荼羅まんだら」という特別展を開催した際には、中将姫が蓮糸織で當麻曼荼羅を織ったと伝わることを踏まえ、唐招提寺の蓮から糸を紡ぎ、蓮糸織体験イベントを開催して大変な盛況となった。

 

 今年も暑い夏になりそうだが、ぜひ奈良博に咲く蓮の花もご覧いただければと思う。

( 奈良国立博物館学芸部企画課交流推進室長 北澤菜月)

 

奈良国立博物館で花開いた蓮(2023年7月撮影)
唐招提寺から奈良国立博物館に運ばれる蓮

[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2025年6月25日掲載]

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