2025.06.25 (水)
「超 国宝」展 海外でも話題に 心に残った灯 長らく続く
初日から長蛇の列ができた奈良国立博物館の開館130年を記念した特別展「超 国宝展―祈りのかがやき―」が盛況のうちに閉幕を迎えた。国内のみならず、海外でも大変話題であった。
特に韓国からは、教科書に掲載されている「七支刀」(天理市・石上神宮所蔵)を見るため、数か月前から待ちに待ったという古代史研究者を始め、仏教美術を専門とする全国の博物館関係者や大学の研究員らが連日、奈良博を訪ねてくれた。
5月中旬以降は彼ら同士で「奈良博の特別展はご覧になりましたか」が流行りのあいさつのようになり、周囲の人から感想を聞いて急きょ来日を決めたという人も少なくなかった。会期の最終週になると本当は余裕はないものの、どうしても展示が見たいからと、夜の便で来日し、開館前から並んで展示を観覧し、その日の便で帰国したという人もいた。
様々な意見もうかがうことができた。ある博物館の関係者は「七支刀を目的に参りましたが、奈良博の歴史や華麗な至宝にすごく感動いたしました。地理的にも近いのに、先人が生み出して現存する造形が異なるのも大変興味深い」と話しつつ、早速、秋の正倉院展に向けて奈良博周辺の寺院や飛鳥の各遺跡を訪問する計画を考えていた。まさに「新奈良博宣言」の発表時に「『奈良博のために奈良に行く』ほど愛される博物館を目指したい」と熱く語った井上洋一館長の野望が少し叶ったように、個人的には感じる。
6月15日で「超 国宝展」は閉幕したが、皆さまの心に残った灯は長らく続くのであろう。「これから」の奈良博を楽しんでもらえるように、次のステップに向かうべきだ。私も、奈良についてもっと勉強しないと。
( 奈良国立博物館学芸部アソシエイトフェロー 安賢善)

[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2025年6月18日掲載]