2024.10.16 (水)
「鹿だまり」減り水浴びに 集団行動 環境で変化?
9月中旬まで猛暑日が続いていたが、「暑さ寒さも彼岸まで」ということわざ通り、奈良市内では、秋分の日あたりを境に、朝夕が涼しくなってきた。それとともに、夕方には、奈良公園内のあちこちから「フィーョー」というオス鹿が縄張を主張する鳴き声が聞こえ、秋の到来を感じさせる。
10月1日のことである。大量の鹿が、奈良国立博物館のなら仏像館入口前の池につかっている、と聞いて見に行ってみた。夏に池に入る鹿は珍しくなかったが、この時期にこんなにたくさんの鹿が池に入っているのを見たのは初めてだと思う。鹿たちはすっかり明るい色の夏毛から、暗い色の冬毛に生え替わっている。いくら朝夕涼しくなってきたとは言え、日中は30度近くになった。冬物に衣替えした鹿たちは、本当に暑くて水に浸かっているのだろう。
この2、3年で、奈良公園の鹿の行動が変わってきた。夏(6月中旬~8月お盆明け)の日没前に奈良博新館前に大量の鹿が集まって座りこむ「鹿だまり」が、2021年をピークにして、昨年あたりから、ほとんど見られなくなったのだ。
全盛期には600頭近く、つまりは、奈良公園の鹿の半数近くが集まっていたのだが、今年は見る影もなかった。かつて、あれだけの鹿が、どうやって集団で同調してあの場所に集まるようになったのか。そして、なぜ集まらなくなったのか。気候や環境の変化が影響しているのか?謎は深まるばかりである。
(奈良国立博物館美術室長 岩井共二)
[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2024年10月9日掲載]