2023.09.20 (水)

仏像の歴史 明らかに CT調査 過去の修理探る

 

 文化財調査の手法の一つにX線CT調査があります。CTは非破壊で内部の様子を知ることが可能で、奈良博の仏像調査でも構造の解明や納入品の発見など多くの成果を挙げています。さらに、虫食いの度合いや修理履歴など保存状態の把握や、解体修理前に立体的な知見が得られることから、修理を行ううえでの一つの足掛かりにもなっています。

 

 仏像修理は元々、仏師が行うのが一般的で、修理の技法や材料には仏像制作と同様のものが使われてきました。仏像の制作技法や材料には時代によって違いがあり、修理にもその特徴が表れます。

 

 現在の文化財修理は制作当初の部分を尊重し、これを維持した修理を行う「現状維持修理」が原則となっています。この現状維持の修理理念が誕生したのは明治時代のことです。それ以前の修理では、信仰的な立場からの塗り替えや改作が主流で、損傷のある箇所を取り除いて新たに補足し、表面を塗り直す修理が多く行われてきました。そのため表面からは、修理が行われたのか、どこが修理されたのか判断できず、像本来の造形や制作時期がわからないため、文化財として正当な評価を受けていないこともあるのです。

 

 これまでは修理の過程で、造像当初のお姿が明らかになることもありましたが、修理の機会は100年や200年に1度と限られており、全ての仏像がすぐに修理されるわけではありません。だからこそ、CT調査から過去の修理を明らかにすることが重要だと考えています。

 

 修理履歴を探ることで、造像当初のお姿や歩んできた歴史を明らかにすることができるのです。

 

 

(奈良国立博物館アソシエイトフェロー 加藤沙弥)

 

CTの断面画像で丸枠内の黒い影は二つの材を留めていた釘の跡。
下の材まで貫通しないため、当初と違う位置で接着されたとみられる

 

  

[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2023年9月13日掲載]

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