2022.08.04 (木)
着せ方の確立 試行錯誤 レプリカの仏像に服
現在開催中の、わくわくびじゅつギャラリー「はっけん!ほとけさまのかたち」の会場では、「ほとけさまに服を着せよう!」という裸の仏像のレプリカに服を着せるワークショップを開いている。ほとけさまはどのように服を着ているのかを知っていただこうというものだ。
裸の仏像のレプリカに着せるための衣は、像の大きさに合わせて、時代劇の衣装を作っている会社に依頼して製作した特注品である。ワークショップでは、ボランティアスタッフの方々が、短い時間で手際よく着せているが、この着方を確立するまでは、試行錯誤の連続だった。
仏像のレプリカは、表面がなめらかなため、単に衣をかけただけだと、ずり落ちてしまう。また、人形みたいに腕が自由に曲がらないこともあり、なかなか思い通りに着せられず、ずいぶんと苦闘した。クリップやゴムバンドを使って、衣の一部をつり上げたり、つまんだりして、それらしい形にして、いつでも同じ形に着せられるよう工夫した。何事もなく衣を着ている仏像だが、実はそんな苦労があったのである。
この服を着せたレプリカを見た後に、もう一度会場の仏像を観察してみてほしい。座った像と立った像とで、着ている衣の形が違っていることに気づかないだろうか。「ほとけさまのかたち」が今までよりも、もっとはっきり見えてくるのではないだろうか。
(奈良国立博物館美術室長 岩井共二)
[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2022年7月27日掲載]