2022.03.15 (火)

翻訳 正しく自然に データベース 多言語化

 外国人の来館者に、私たちが翻訳した各国の言語のキャプションを参考にしてもらいながら、展示品を楽しんでいただくのが翻訳者としての希望だったが、新型コロナウイルスの影響で海外からの来館者も足止めされた。

 

 このような状況下で、少しでも早く、来日できない海外の方々に奈良博の収属品を見ていただけるように、収蔵品データベースを多言語化し、ウェブサイトで公開することになった。そのため、私は今、データベースを中国語に翻訳する作業を進めている。

 

 しかし、作業の難しさを感じている。それは、作品の名称を翻訳するとき。例えば、収蔵品の「埴輪(はにわ)犬」を単に簡体字に換えるのではなく、現代中国語では異なる意味である「埴輪」の文字を「土俑(土人形の意味)」という風に理解した上で「土俑犬」に訳す方がより自然に伝わるのではないだろうか。

 

 また、作品の解説文ではなく、名称なので、日本語のままの漢字を保留して、なるべく換えないようにするのが今までの方針だったが、今回は同じ漢字でも、中国語と日本語では意味が異なるので、適切な訳文を作ることにした。

  

 収蔵品は彫刻・絵画・書跡・工芸・考古・中国古代青銅器の6分野に分かれている。今回、私は各分野の作品約4000点の中国語翻訳を担当する。作品名称をはじめ、材質や技法、年代、伝来などの翻訳は、日本文化を知らず、そして仏教美術に親しみの薄い外国人にも、分かりやすく正しい情報を伝えなければならない。

  

(奈良国立博物館情報サービス室アソシエイトフェロー 張小娟)

 

奈良博収蔵品データベースの中国語版ページ

(読売新聞 2022年3月8日掲載)

一覧に戻る