2021.09.21 (火)

ポスター 曼荼羅を投影 「奈良博三昧」無事に閉幕

 一昨日、特別展「奈良博三昧―至高の仏教美術コレクション」が無事閉幕した。奈良博の所蔵作品のみで日本仏教美術1400年の歴史をたどるもので、各時代を代表する作品の魅力を存分に発信できたように思う。

 

 本展覧会では、展示会場のディスプレーやバナーを章ごとに色分けし、奈良博公式キャラクター「ざんまいず」がナビゲーターとしてパネルやキャプション(説明)にも登場するなど、難しいというイメージがもたれがちな仏教美術の魅力を、視覚に訴えることでわかりやすく伝えることが重要な基本理念だった。

 

 さらに幅広い層の方々にも関心をもってもらうため、ポスターやチラシ、デジタルサイネージ(電子看板)には、アメコミやSF映画の戦隊ヒーローのように仏像たちが躍動するポップなデザインを採用し、SNSなどを通じてビジュアル重視の積極的な広報を展開したことも話題となった。

 

 これらのメインビジュアルに「奈良博攻めすぎ」など多くの意見が寄せられた。実は、多くのほとけが整然と並ぶ密教の世界観を図示した曼荼羅(まんだら)のイメージが投影されていることにお気づきになっただろうか。

 

 日本に初めて本格的な密教を伝えた空海は「密教は奥深いため、文章のみで真理を伝えることは難しいので、図画を用いてこれを示すべきだ」という言葉を残している。

 

 つまり、曼荼羅のイメージをもつ今回のポスターは、仏教美術の奥深い魅力を視覚的にわかりやすく伝える展覧会の理念を、見事に体現していたのだ。

 

(奈良国立博物館教育室長 谷口耕生)

 

「奈良博三昧」展のデジタルサイネージ(電子看板)のデザイン

(読売新聞 2021年9月14日掲載)

一覧に戻る