2026.09.16 (水)

温湿度管理 劣化防ぐ 作品ごとに適した環境維持

 日本の夏といえば、気温に加えて湿度も高く、ジメジメとした蒸し暑さが思い浮かびます。一方で、海外には日本よりも乾燥した地域も多く、国や地域によって温湿度環境は大きく異なります。実は、こうした温湿度の違いが作品管理に深く関わっています。

 

 文化財に適した温湿度は、材質によって様々です。多くは紙、木材、布、金属など複数の素材から作られていて、それぞれ適した環境が異なります。これらの素材は温湿度の影響を受けやすく、急激な温湿度変化は表面のはくやカビの発生など劣化の要因となります。そのため、温湿度をできるだけ一定に保つことが重要です。

 

 さらに、美術館や博物館など、各施設によって温湿度設定が異なることもあります。借用した作品の中には、普段展示されている環境と同じ条件で保管・展示することが求められる場合もあります。

 

 各館には、借用した作品を一時的に保管する部屋が設けられています。一時的といっても簡易的な設備ではなく、収蔵庫と同様に温湿度管理が行われています。特別な温湿度管理が必要な作品は、保管場所の温湿度設定を変えるなどして個別に対応しています。

 

 展示の際には、湿度調整装置の付いた展示ケースを使用したり、空気中の水分を吸収・放出して適切な湿度を調整する調湿剤を設置したりして、ケース内の環境の安定化を図ります。ケースで覆わない露出展示の作品の場合も、施設管理の担当者と連携し、展示室内で極端に温度や湿度の高い場所、低い場所が生じないよう、空調の調整やモニタリングを行っています。

 

 真夏にはオアシスのように感じられる展示室ですが、その涼しさの裏側で、安全に作品を公開するための環境管理が行われているのです。

 

(奈良国立博物館保存修復室アソシエイトフェロー 加藤沙弥)

[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2026年9月2日掲載]

 

奈良博の展示ケース内に設置された調湿剤と温湿度測定機器

 

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