2026.06.24 (水)

印刷物 時代語る資料に 一時使用前提の「エフェメラ」

 大学4年生の夏、世界一周航空券を手に、2か月かけて北半球を巡った。その旅で手に入れた博物館や遺跡の入場券、パンフレットは、いまも自宅の本棚の片隅で、現地のレジ袋に包まれて小さな山をなしている。取り出すたびに当時の空気がよみがえる気がして、幾度の引っ越しを経ても捨てることができない。

 

 一時的な使用を前提とした印刷物は「エフェメラ」と呼ばれる。本来は使用されれば役目を終え、やがて失われていくものだ。だからこそ、意識して収集・保管しなければ容易に散逸してしまう。しかし、その何気ない一枚にも、作られた当時のデザイン感覚や社会の空気が刻まれている。はかない紙片も、時を経れば過去を知る貴重な手がかりとなるだろう。

 

 アーカイブズ担当である私は、奈良国立博物館が開催した展覧会のポスターやチラシ、チケットといったエフェメラの収集を始めた。館内の各部署で分散して保管されていた資料を資料室で集約し、体系的に保存することで、これまでの奈良博の歩みをたどり、未来へ引き継いでいけるよう目指している。

 

 併せて、当館では資料のデジタル化も実施しており、画像データベースで「ポスター」と検索するとご覧いただける。例えば、昭和10年(1935年)に開館40年を記念して開催された「ぎょぶつ館蔵美術工藝品展覧會」や、これまでの正倉院展のポスターを公開している。ぜひ、お気に入りの1枚を見つけていただければうれしい。

 

 そして、ふと身の回りを見渡せば、そうした紙片が眠ってはいないだろうか。

 

( 奈良国立博物館資料室専門職 大内静華)

[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2026年6月17日掲載]

 

第2回正倉院展(1947年)のポスター

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