2026.03.25 (水)
文化財データ守り継ぐ ITで修理前画像保管
奈良博にも多くの企業と同様に総務部門がある。様々な職員が協力して奈良博を作り上げているが、博物館にもIT人材が必要だという事で席を頂いているのが私だ。
情報発信をする上で疎かにできないものが情報セキュリティーである。サイバー攻撃というと大袈裟に聞こえるが、実際には幾重もの防御壁に阻まれ、未遂に終わっているだけで、多くの組織で日常的な事だ。攻撃者は虎視眈々と防御の隙を狙ってくるので、侵入を許さぬよう情報処理安全確保支援士という国家資格の知見を活かして対策している。
一方、博物館らしい悩みもある。それは、増え続けるデータの保管方法だ。当館公式ウェブサイトが誇る収蔵品データベースには、館蔵品の高精細画像が掲載されている。例えば、日本書紀と検索すると当館所蔵の日本書紀の解説と共に、修理前後の画像データがずらりと並ぶ。
文化財は修理しながら受け継がれていくものであり、修理前の状態は当然、修理後には二度と撮影することが叶わない貴重な資料となる。長年積み重ねた文化財の修復活動の結果、膨大な枚数の画像が保管されている。また、近年カメラの超高精細化などで扱うデータのサイズが大きくなり、ストレージ消費量が加速度的に増えている。セキュリティーや予算との兼ね合いで、いかにデータを長期保管していくか悩ましい。
100年後、1000年後にこのデータがどの様に伝わるのかはわからない。でも未来の誰かに、文化財と同じくデータを継いでいこうとした技術者がいたんだと思ってもらえたら本懐だ。
( 奈良国立博物館総務係主任 好井昭人)
[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2026年3月18日掲載]
