2021.06.01 (火)

作品の輸送 東へ西へ 考古資料相互活用が一段落

 奈良国立博物館は、日本各地で出土した考古資料を多数所蔵している。明治時代から昭和前半にかけて国有化されたものや、近年購入されたものなど、様々な由来を持つ。それらを一時的に地元に「里帰り」させ、展示や研究など様々に活用していただく「考古資料相互活用事業」を行ってきたが、当館単独で行う事業としては、今春、18年の歴史に終止符を打つこととなった。

 

 最終年度となった2020年度は、青森県立郷土館や山口・下関市立考古博物館など、3館と交流を行った。企画自体は数年前から動いていたが、いざ作品を運ぶ段になって新型コロナウイルスの影響が及び、当初の企画通りには進まない部分もあり、様々に知恵をしぼりながらの実施となった。

 

 青森県立郷土館では、奈良から作品を輸送する予定日の1か月前に全館休館が決定し、急きょ、新たな展示場所を模索せざるを得なくなった。幸い、かの有名な三内丸山遺跡に付属する展示室の一角での公開が可能となり、胸をなで下ろした。

 

 下関市立考古博物館へ里帰りした「伝長門一ノ宮経塚出土品」については、せっかくの山口県初公開の機会に来場者が少ないのはもったいない! とのことで、学芸員の気合がこもった熱い展示解説動画を、下関市立考古博物館公式ユーチューブチャンネルにて公開していただいた。

 

 今春は、これらの作品の回収のために、トラックに添乗して東へ西へと走ったのだが、おかげですっかり腰を痛めてしまった。しかし、後部座席で揺られつつ、本事業でこれまでに訪問した全国各地の館との思い出を振り返っていると、その痛みもいささか心地良く感じられた。

 

(奈良国立博物館企画室長 中川あや)

 

ユーチューブ動画で紹介された奈良国立博物館蔵作品

(読売新聞 2021年5月25日掲載)

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