2026.09.30 (水)
仏画借用歴 良質の証し 特別展閉幕
9月13日をもって、8週間にわたって開催した奈良国立博物館の特別展「南都仏画-よみがえる奈良天平の美-」が閉幕した。本展では米・ボストン美術館から13件という多数の仏教絵画をお借りし、充実した展示を実現することができた。
そのうち、東大寺伝来の「釈迦霊鷲山説法図(法華堂根本曼荼羅)」は2002年開催の特別展「東大寺のすべて」以来、いずれも奈良の社寺に伝わったと考えられる「法相曼荼羅」、「四天王像」、「十一面観音菩薩来迎図」、「北斗九曜影向図」は、1995年開催の特別展「日本仏教美術名宝展」以来の奈良博での展示となった。
ボストン美術館の日本仏画コレクションの質と量は世界的に見て最上級であり、奈良ゆかりの仏教絵画の名品が多数所蔵されている。そのため、今回の借用作品の中には「初めての里帰り」でないものも多かった。
展覧会のコピーとしてよく「初公開」や「初めての里帰り」が使われるのは、貴重な機会という印象を与えることで、集客に寄与すると考えられるからだろう。しかし、むしろ過去にも借用の履歴があることは、その作品が素晴らしい作品として長く評価され続けていることや、貸し出し側と借用側が、展覧会などを通じて、よい形での交流を長く続けてきたことを物語るとも言える。つまり、初めてでないことも尊い事実なのだ。
今年ボストンから迎えた作品を、また奈良の地に迎えられる未来が訪れることを願いつつ、お借りした作品が無事にボストンに帰着する知らせを待つことにしたい。
(奈良国立博物館保存修復室長 北澤菜月)
[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2026年9月16日掲載]