2026.09.02 (水)
重命 心ひかれる絵仏師 仏画展 仏像にも光
定朝、運慶、快慶――。いずれも仏像をつくった著名な仏師で、その名を聞いたことのある人は多いだろう。では、尊智、重命、命尊はどうだろうか。
彼らは絵仏師である。仏画を描き、しばしば仏像の彩色にも携わった。当館で開催中の特別展「南都仏画―よみがえる奈良天平の美―」(9月13日まで)では、かつて「南都」と呼ばれた奈良ゆかりの仏画が一堂に会しているが、こうした絵仏師の仕事にも光を当て、彼らが彩色した仏像も集結する。
幾多の絵仏師の中でも、重命には特に心ひかれる。絵仏師としては異例なほど多くの事績が伝わり、南都における60年余りの活動が知られる。 代表的な仕事として、1272年完成の不動明王および八大童子像(東京・世田谷山観音寺蔵)を紹介したい。運慶の孫・康円が造り、重命が彩色を担った9体だ。明治時代の神仏分離令で廃寺となった内山永久寺(天理市)にかつて伝わり、本展で明治以来、初めて奈良への里帰りを果たした。
親しみやすく、動きに富む康円ならではの造形に、バラエティー豊かな文様がさらに精彩を与える。八大童子のうち制吒迦童子の衣に見える翼の生えた怪魚(図2)など、不思議な動物が舞う様子も楽しい。当代随一の仏師との仕事には重命も気合いが入ったのだろう。
展覧会の準備中、「仏画の展覧会になぜ仏像が並ぶのか」とよく質問された。いつもと視点を変え、会場では仏像の彩りにぜひご注目いただきたい。
(奈良国立博物館資料室研究員 内藤航)
[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2026年8月26日掲載]
