2026.07.22 (水)
仏像2体だけ 独特展示 韓国派遣で新たな気づき
奈良国立博物館では、韓国・慶州市の国立慶州博物館と学術協定を結んでおり、毎年、相互に職員を派遣して、お互いの国の歴史や文化を学ぶ。今年、奈良博からは私が派遣されることになり、ひと月、慶州に滞在した。
慶州は新羅の都が置かれた地として知られ、古墳や寺院などの歴史遺産が今も多く残る。悠久の歴史が詰まった慶州の風景は、奈良の明日香にも似た風情があり、文化財の仕事をしながら奈良に暮らす私にとって心地よく、馴染みやすいものだった。滞在中は国内各地で韓国が誇る宝物の数々を見学でき、自身の研究テーマに直結する発見にも恵まれた。
期間終盤には、国立慶州博物館主催の研究会で、滞在中の新知見も含めた研究発表の機会も得られた。韓日の研究員同士の情報交換の場はとても刺激的で、日本にとどまっているだけでは見えてこない世界が開けていった。海外との学術交流の醍醐味を実感した。
もう一つ、興味深かったのは、各地の国立博物館の平常展だ。
ソウルの国立中央博物館では、解説パネルが一切ない広い部屋に、コレクションを代表する2体の仏像だけを展示した独特の空間づくりがみられる。国立扶余博物館では、有名な「百済金銅大香炉」を展示するための専用の展示棟が設けられている。こうした展示によって各館のコレクションの魅力を最大限に引き出し、見せることに成功していた。
コレクションの発信は、博物館の魅力を高めることにつながるのではないだろうか。博物館の研究員として、多くの刺激を受けたひと月であった。
(奈良国立博物館美術工芸室主任研究員 三本周作)
[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2026年7月15日掲載]
