2024.04.03 (水)
気遣いのひと言 添える 日本人特有メールの書き方
日本で仕事をすると、毎日多くのビジネスメールを見て対応しなければならない。中国人の私にとって本業務よりメールの書き方を考えることのほうが大変かもしれない。
私は奈良国立博物館で中国語担当として展示パネルの翻訳や文化財関係の国際交流などの業務に携わっている。働き始めた時、連絡係の方がいるため、翻訳作業を主にしていた私は、社内・社外メールのやり取りに関わらなかった。今は経験者として仕事をスムーズに進めるために、仕事の報告や連絡は自らメールで行うようになった。
その中で、一番印象に残ったのは日本人特有のビジネスメールの書き方だ。敬語を用いる文面をはじめ、自分の好みや意見、都合を押し付けるのでなく、クッションのような言葉を添えることが勉強になった。
日本人は当たり前のことだと思っているかもしれないが、「よろしければ」「恐縮ですが」「お手数をおかけしますが」などの文言は人を救う大切な一言だと思う。ある展覧会のことで中国側との連絡事項が頻繁にあり、少し疲れて落ち込んでいたが、このような言葉を目にするたびに、なんだか心が穏やかになり、また元気に頑張ろうという気持ちになった。
私の母語・現代中国語は昔より敬語がなくなり、シンプルな言語になってきた。日本語のような“心くばりのひと言” が加わることで、心身ともにほっこりする。私はこのような気遣いや感謝の気持ちがよりよく伝わる日本語メールの表現の仕方が好きだ。そして褒めてあげたい。
(奈良国立博物館研究員 張小娟)
[読売新聞(奈良県版・朝刊) 2024年3月27日掲載]